インタビュー:久古健太郎さん(デロイトトーマツコンサルティング合同会社)

今回取材を受けてくださったのは、元プロ野球選手で現在はコンサルティング会社に勤める久古さんです。

2011年にドラフト5位でヤクルトスワローズに入団し、1年目にセ・リーグ新人記録(当時)となる22試合連続無失点を記録。左のセットアッパーとして、2015年のリーグ優勝にも貢献した久古健太郎氏。2018年に戦力外通告を受け、12球団合同トライアウトを受けるも、引退を決意。2019年2月からデロイトトーマツコンサルティングで、スポーツビジネスの支援をされています。

では、早速質問してみたいと思います。

まず初めに、今はどんなことをしていますか?

僕が今勤めているデロイトーマツでは5年前からスポーツビジネス支援をしているのですが、僕はそのビジネスの一端としてFC今治のプロジェクトに入らせてもらっています。少し詳しく話すと、スポーツ体験は現地での観戦だけじゃなくて、観戦までの移動、イベント会場、SNSなど、一連の流れが合わさって「観戦体験」である、という定義があります。どうしたら観戦体験を上げられるのか、課題を見つけて解決しています。

プロ野球引退後、なぜコンサルの仕事を選んだのですか?

コンサルは企業の課題を解決するのが仕事です。課題解決という視点で仕事ができればいいなと思い、コンサルを志望して就職活動をしました。いくら野球選手が変わったところで、運営側がしっかり変わっていかないと本当の意味で球団とか野球界は変わらないと思っています。ですから僕は、運営側の課題解決がお手伝いできるよう、勉強もしたいと思っています。

コンサルタントの仕事をする時に大切にしていることはなんですか?

これはスポーツに通ずることでもあるのですが、目標から逆算して動くようにしています。例えば、球を早く投げたいという目標があると、最初に分解して考えます。まず良いフォームで投げなければならない、そのためにはまず自分を知ることが必要。そしてそこで見つけた課題を、トレーニングで改善していく。この流れです。

今の仕事も同じで、ゴールを設定して、分解していきます。目の前のことを明確にしてそれを積み重ねていく。今までやってきたことと同じで、目標から逆算して動くことが大事です。

野球を辞めて「第二の人生」に進むことは大きな決断だったと思いますが、その時考えたことは何ですか?

1年前、32歳のときに野球を辞めましたが、その時は10年後20年後の自分を想像して、その時の自分が今の自分にどの選択をしろというだろうなと考えました。そして、「自分に対して厳しい道を選べ」と言うだろうと考えました。それが自分の重要な選択の基準ですね。厳しい選択をすることで、良い未来につながると思っています。

詳しくいうと、野球選手は現役を引退した後、球団職員といって、球団での仕事が結構あります。その中で僕が選んだのは就職活動を一からやるという道です。正直この選択をした時、退路を断つというか、引退してすぐの32歳の男がどこに行き着くか全くわかりませんでした。

ですが、フラットに社会から見られている自分を知ってから、また1から頑張ればいいと考えていました。

自分に対して厳しい選択をするというのはとても難しいことだと想いますが、なぜ自分に対してその問いかけができたと思いますか?

現役時代から常にそういう問いかけをしていたからだと思います。何か選択を迫られた時には、何年後かの自分が何をいうだろうか、というのを想像して、だったら今の自分は何をするかを決める。今の自分は楽なところに進みたいけど、どっちが後悔しないだろうなという選択の基準です。

人間は理想像をたくさん描くけど、本気で必要にならないと、行動できない生き物だと思います。なので、本気で必要になる場に身を置かなければと思いました。

僕が社会人野球からプロ野球に入るときも、リスクがあるプロに入るか、引退後も社員として残れる安定した社会人野球を続けるか悩みましたが、やはり自分は後悔したくないという思いでプロを選びました。割と学生の頃からそういう方法で道を選んできたのだと思います。

これからしたいことはありますか?

スポーツをマネジメントしたいという思いと、「セカンドキャリア」を本質的に変えたいという2つの思いがあります。道筋を作ってあげるのがサポートではなくて、選手が選手のうちから将来のことを逆算して、現役時代から動けるようになるのが本当に意味でのサポートだなと思っています。だからそのきっかけを作ったり、構造を作りたいですね。そこが本業じゃなくてもいいので、ゆくゆくやっていきたいです。

スポーツの価値ってとても難しいんです。スポーツ選手が選手時代に色々と学んで、引退した後もちゃんと社会で活躍するという事例が増えれば、スポーツに対しての見方も変わると思います。なので、スポーツの価値を高めるには、ある意味引退した後がすごい大事だなと思っています。

今でも野球との関わりはありますか?

今年何回か野球を見にいって、普通にヤクルトファンの応援団の真横で見ていたら、流石に気づかれました(笑)。現役時代めちゃめちゃ僕を野次ってた人が急に優しくしてきたりして。ファン目線で所属していた球団を見てみるのは面白かったです。

よくありがちな、プロ野球を引退したらなんかしら野球に携わりたいというのは安易で嫌いなんですよ。野球しかしてないから野球をやるじゃなくて、野球の何が好きだったのかを考えるべきです。チームワークでやることが好きなのか、練習してできるようになることが好きなのか、とか掘り下げたらいくらでも横に展開できます。

僕は社会に出る上で、野球の何が好きだったのかなと考えた時、できなかった事ができるようになったことが一番好きだった。だったら自分が1から社会に出て、勉強すれば、また自分を高めていけると思いました。だから野球が終わってもとても楽しいです。

野球をやってる人へのアドバイスはありますか?

野球の経験が仕事に生きてる、と感じることがよくあります。
スポーツはもともと持っている先天的な能力が7割、残りの3割が努力で占められています。ほとんどの人はめちゃくちゃ努力しても多分プロになれません。でも能力がない分普通の人はどうやって勝てるか考える。その考える力が社会で生きてると感じます。

プロになれるとかなれないとか、結果を残す残さないも大事だけど、なるべくそこで一喜一憂せず、高い目標を持って努力する。それは必ず社会に出た時に生きると思います。

次のステップに行った時にあの時頑張ったよなと思える日がくるので、本気で練習して悔いだけ残さないようにして欲しいです。

影響を受けた本はありますか?

野球をやっていた時は、元広島の黒田さんの「決断」という本に野球選手としてハッとさせられました。僕らは毎日試合があり、応援を当たり前に感じてしまうことがあります。

でもその日を楽しみにしてくれる人が何万人分の1人でもいるなら、その人のために全力で投げると書いてあって、その言葉は自分が打たれたり、逃げ出したくなるような時に、自分を奮い立たせてくれたいい言葉だったと思います。

最後に、座右の銘を教えてください!

不撓不屈(ふとうふくつ)です。
何度も野球を辞めようと思ったけど、最後まで辞めなかった。だから悔いのない野球人生を送ることができたと思います。どんな時でも諦めないことが肝心です!

まとめ:

今回のインタビューを通して、久古さんが目的から動くことを徹底されていることを知りました。ゴールを設定してそこから逆算して動き続けることはとても難しいことですが、その思考こそが何かを成し遂げるためには必要です。すぐにその思考を身につけるのは難しいけれど、少しずつ習慣化していくことが一番の近道なのかもしれないと思いました。

いまに満足せず新たな高みを目指す久古さんの姿からとても刺激を受けました。
ぼくらも、より多くの人に識字教育のサポートをすることをゴールに、頑張っていこうと思います。

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この記事を書いた人

GakuIwata