インタビュー:井本陽久さん(栄光学園数学非常勤講師・いもいも教室主宰)

今回は教育関連取材の第2弾ということで、イモニイこと、栄光学園中学・高校 数学教員であり、私塾「いもいも教室」を展開されている、井本先生に取材させて頂きました。井本先生が主宰するいもいも教室は、子ども達の思考力や表現力を養う塾で、御茶ノ水、東戸塚、南浦和で開講されています。 (メンバーの小池も、表現力のクラスに通っています)。

それでは質問に移ります。

なぜ先生になろうと思ったんですか?

その質問は何百回も聞かれるんだけど、実はすごく答えづらいです。2人は今、中学生じゃないですか。来年にはまた1つ学年が上がるでしょ。そこには何も疑問を抱かないよね?僕もそんな感じで、小学校→中学校→高校→大学と進んだらじゃあ次は先生だよなって思って、何も疑問を抱かなかったんです。

だから大学卒業後に、「この学校で教えたいです!」って母校に伝えたら、来年は空きがありませんって言われて。え!?空きがあるとかないとかあるの!?みたいな状態になりました。それくらい先生という職業のことが全く分かってなくて、なりたいと言ったらすぐになることができる職業って思ってました。

授業を面白くしようとしてくれている先生と、解き方だけを教える先生だと、どっちの先生の方が自分にとって良いのでしょうか?

たとえば受験で言ったら、傾向を掴んで対策を立てれば受かるから、解き方を教えてくれる先生が良いってなるんだけど、でもそれって結局受験だけの話で、将来の仕事にも役に立たないし、何より面白くないじゃないですか。問題を出してそれを解かせるだけだったら、ほとんどの人はとりあえず覚えちゃえ!みたいになって、つまらなくなってしまうんです。そして多分、今の学校の先生の8割は問題を解かせることにしか目が向いていないから、子どもたちにとって、つまらない方向に行ってしまうと思います。

そうならない為には、たくさん失敗をすることが大事だと思うんです。たくさん失敗をしたら、自分のやり方を見直すようになって、今まで当たり前にしていたことを意識化できるようになります。そして、自分ってなんだろう?自分は何がしたいんだろう?って考えるようになって自立できるようになるんです。

確かに、ただ単に問題を解くだけではつまらないです。そういう授業も多いですけど・・・。

宿題を出しても、絶対に答えを写す人はいるし、ちゃんと勉強してる人は宿題なんて出さなくても元々自分でやっているから、宿題にはあまり意味が無いと思っています。でも学校の先生は、深く考えずにとりあえず宿題出しとくかーって感じだから、いつまでも宿題という存在があり続けるんです。

だから僕は宿題を出す時は答えを提示しないし、問題量もすごく少なくして解かせます。そして、集まった様々な別解や誤答をみんなで共有して、間違えた箇所や別の解き方など、色んな議論をしています。そうすると、生徒たちは問題が解けたかどうかの結果ではなくて、その問題を解く上でのプロセスに目がいくんです。それが本当に大事なんです。

実際に回答が正解かどうかなんてどっちでも良い。他の先生がそういう意図で出しているかは分からないけど、数学の問題で途中式を書かせるのはそういう理由があるからです。

プロセスを自分で考えることが大切、ということですね。

それと、生徒のやりたいようにやらせてあげることを大事にしています。その子のやりたいようにやらせてあげたら、それは楽しくて気持ちのいいものになると思うんです。このチャリティプロジェクト、Meet to Leadだって、自分たちのやりたいようにやってるから今楽しいでしょ?そういうことなんです。

長くなったので要約すると、大事なのは、間違えた時に、これはなんで間違えたんだろうっていうプロセスを考えて、今までの自分を見直して、当たり前にしていたことを意識化して、今までの当たり前を疑うことと。あとは、この問題はどうしてこんな綺麗な答えになるんだろうっていう、美しいものの理由を探すということですね。

どうして学校の先生だけに留まらず、いもいも教室も開いたんですか?

これも最初の質問で答えたみたいに、開こうこと思ったというより、流れでそうなったという感じです。僕はなんというかロマンチストで、今ここでこうやって話していることも全部、運命によって成り立っていると感じているんです。そういう感じで、縁を大事にしていたら、いつの間にかいもいも教室が出来ていたっていう感覚ですね。

授業内容はどうやって考えていますか?

問題ごとにどういう風に生徒に渡すかを考えていますね。僕は小学校の頃から自分で問題を作ったりしていたので、そういうことに慣れているんです。

問題集も使うけど、そのまま出すわけではなく、ちゃんと面白くなるようにプリントにして出しています。そしたらみんなぱっと取り掛かることが出来ると思うから。

井本先生は、年に2回ほどフィリピンのセブに行っていもいもの活動をしているそうですが、日本の子どもとセブの子どもで違いはありますか?

日本人の多くがフィリピンは発展途上国だから可哀想な子どもたちが多いと考えていると思うんですけど、これはむしろ逆で、セブの子どもたちは周りにコントロールされずにのびのびとしているので、本当にキラキラしていて、可哀想だなんて1mmも感じません。向こうは親達も結構適当な感じで(笑)、子ども達に自由にさせています。だから、フィリピンの子ども達には、余白がたくさんある。

日本の子どもとはそういう所で違うかもしれないですね。ぜひみんなにもフィリピンに行って、現地の子ども達と触れ合ってみて欲しいです。

好きな言葉はありますか?

僕は10年に1回くらいの割合で、名言みたいなのがふっと降りてくることがあって、20代の時は「自分の人生が自分に悪いようにするはずがない」で、30代の時は「成長しなくてもいい」という言葉が降りてきました。なぜかはわからないけど、ふとそういう言葉が降りてくるんですが、そういう言葉を大切にしています。

今の学校の先生達にアドバイスはありますか?

仕事も多くて色々大変だろうけど、空気を読むなら上司ではなくて子どもの空気を読んであげて欲しいですね。

まとめ

今回の取材を通して僕が感じたのは、好きなことを自分のやりたいようにやっていれば絶対に成功するということです。経済的な意味や知名度的な意味での成功ではなくても、井本先生が20代のときに降りてきた言葉「自分の人生が自分に悪いようにするはずがない」のように、絶対に良い方向に行くことが出来ると思うんです。

だから、今度から自分がやりたいことを見つけたら、やってみることを渋らず、自分の気持ちに素直になってトライしたいと思います。

井本先生に密着したルポルタージュはこちらです。ぜひ読んでみてください。

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